バクーは，建物が近代的な綺麗な街でとても過ごしやすかったです．
　現地の人やガイドさんもとても優しく，困ったことがあっても親切に対応してくれました．ただ食事は少し合わなかったようで，最後の2日間は体調を悪くしました．
　国際交流では，英語で話すのは苦労しましたが，いろんな国の人が積極的に話しかけてくれて，またチェスやビリヤードなどを一緒にして自然と話すことができました．また趣味でルービックキューブをしているのですが，10人以上の人が集まってキューブを解いている場面もあり，その中にアゼルバイジャン記録保持者とモロッコ記録保持者がいたのには驚きました．同じような趣味を持っている人がたくさんいて，すぐに仲良くなれました．
　私はIOIの感想文で特に競技中の部分が好きなので，自分もそれについて詳しく書こうと思います．

　コンテスト1日目
　まず全部の問題を読んでshoesが簡単だと思い最初に取りかかりました．というのも，米田さんから簡単枠の見分け方で部分点が雑なものが簡単と教えてもらっていたので，shoesのn=1の部分点で10点というのが雑に見えたからです．実際にこれは一番簡単な問題で1時間で100点が取れました．その後rectとsplitを考えました．それぞれ簡単な部分点50点と40点は分かるのですがそこからなかなか進みません．splitの方が難しいと思ったので，40点を実装して後の2時間ちょっとでrectをすることにしました．しかし結局O(n² m log m)までしか落とすことが出来ずrectは50点で終わりました．この日の合計は190点の64位で，同点がたくさんいて銀のボーダーまで続いていました．目標の金メダルラインはrectの72点が必要で他の代表3人はしっかり取っていて実力の差を感じました．

　コンテスト2日目
　問題を全部読んで，lineがoutput only ，visionが慣れない形だったのでwalkingから取りかかりました．24点より上が難しく進まなかったので，visionに移ります．visionは思っていたより考えやすく，得点が伸ばせそうだったので時間をかけると満点が分かりました．急いで実装して100点を取った時には，残りが3時間近くあったのでもう一度walkingに戻りました．output only は最後の1時間30分くらいで取り組もうと決めていたからです．まず24点を実装しますが思っていたよりも実装が重く1時間近くかけてしまいました．そしてそれ以上walkingは進まず，残り1時間30分を切ったのでoutput onlyに取り組みました．時間がないので方針を慎重に決めて実装すると，デバッグに時間を取り，残り30分でやっと１回目の提出ができました．すると53点という思っていたよりいい点数が取れました．詳しく結果を見ると，点が直線上に並んでいるケースで1点しか取れていなかったりしたのでそれ用のプログラムを書きましたが焦ってバグらせてしまい，結局時間内には終えられませんでした．

　結果は1日目と合わせて367.33点の52位で銀メダルでした．解析の時間にバグが分かり，一行追加するとoutput only が9点上がったので，そこだけ少し心残りでした．しかしそれくらいしか心残りがなく，結果は金メダルとは40点以上差があったので金メダルを取ることの厳しさを実感しました．競技は実力を出し切れたと思うので，目標は達成できませんでしたが，結果には満足しています．
　最後に，このIOIでとても貴重な経験がたくさんできて，また様々な人と出会うことが出来ました．随行してくださった選手団の方々，ガイドさんをはじめとするボランティアの方々，また選抜と派遣をしてくださったJOIの方々，本当にありがとうございました．

　今回は，去年の日本大会に引き続き2回目のIOIとなった．開催場所はアゼルバイジャンで，海外に行きたい，という動機で始めた情報オリンピックは5年目にしてやっと叶った．
　日本からアゼルバイジャンへの直行便はなく，行く機会も滅多にないため，今回の訪問は，経由地のイスタンブールも含めて，とても面白かった．特に，帰国前夜にガイドさんにお願いしてアゼルバイジャンの夜景を案内してもらったり，地下鉄に乗ったりしたのは非常に思い出に残るものとなった．
　ただ，競技2日目の前夜から体調を崩してしまった．日付が変わったころから，お腹の調子が悪くなり，夜中にトイレに通うこと無限回，ほとんど眠れぬまま朝を迎えた．朝食は食べられず，コンテスト中は熱にうなされた．競技後は，病院へ直行．アゼルバイジャンで1泊の入院体験をしたことは，他の日本選手にはない特別なエクスカーションとなった．
　競技の結果は金に1位差で届かないという悔しいものだった．これで中学1年生の時から続けてきた情報オリンピックが終わってしまうと思うと，心残りだ．
　しかし，二度も日本代表になれたことを誇りに思う．そして，そもそも情報オリンピックに挑戦するきっかけとなったレギオをはじめ，ご指導いただいた先生方，このような貴重な機会をくださった事務局の方，先輩方など多くの方々に感謝したい．

　IOI2019 に公式選手として参加し，銀メダルを得ました．
　今年の舞台はアゼルバイジャンでした．私はアゼルバイジャンという国のことを，首都がバクーであることすら知らない状態で訪れたわけですが，色々な観光のおかげで親しく感じるまでになりました．本当はもう2,3日ぐらい居たかったけど今回はこれでお別れです．
　さて，観光については長くなるのでここでは省くとして，自分の競技中の動きについて振り返ります．結論から言うと，選んだ戦略も誤りでしたが，それ以前に実力が偏っていて不足であることが今更ですが自覚されました．
　まずDay1 (rect,shoes,split)で，1問目を見てすぐに自明な部分点に取り掛かりましたが，これは今思うと失敗だったと思います．題意があまり複雑でない問題で，のちのち上位の部分点で自動的に拾える部分点をわざわざ今拾う理由は無く，その時間を考察に充てがうべきでした．次に見た2問目についても，このような失策をしており，今後は直しましょう．2問目の満点を得た後に3問目に取り掛かった際には，自明ではない部分点を見て「これを少し弄れば下の部分点も回収できる」と気付き，ややあって通せました．これは先の失策とは対照的ないい戦略です．その後一旦1問目に戻って他の部分点を取ろうとしますが，失敗します．ここで切り替えて前の部分点から順に解き，それを上手く弄って先ほど取れなかった部分点を改めて拾い上げたのは我ながら褒めてあげたいです．ようしいい子だ，撫でてやろう．最後の1 時間はただチョコレートを食べていましたが，欲を言えばここでsplit の満点を取りたかったです．当時の落書きには想定解と同じ方針が書いてはいるものの，すぐにバツで消してあり，突撃しなかったことを悔いました．しかし「明らかな場合を排除して考える」という教訓が収穫できたので，無意味ではなかったと思いたいです．
　そしてDay2 (line,vision,walk)ですが，順位表を見ればわかる通りかなり緊張を強いられる順位の並びでした．まず，問題を見ずに「Output only だから最後に」というのがダメでした．自分がどれを解けそうかをちゃんと見ておきましょう．それはともかくとして，2 問目の綺麗な解放が思いつき，これをさっと実装できたのはかなり良かったと思います．解法の前半だけ書けば部分点がもらえるということに気付き，実際にそれで実装に誤りが無いか確かめたのもグーでしょう．この問題だけ見ればかなり理想に近い動きをしていました．ここだけ見れば，ですけど．3 問目はどの部分点も骨の折れるものであり，部分点をちまちま取る戦略のカウンターとも言える問題でした．ここで小さな部分点をまず取るという判断をしたのは，正直，失敗でした．考えれば次の大きな部分点が分かるかもしれないのに，そこに頭を回さず重い実装に専念したのです．そこだけならまだいいのですが，次にOutput only に手をつけて，結構な時間を費やし，いざこちらに戻ってきたら「時間がない」と言って放棄，Output only でギャンブルに出る...．緊張があったのでしょうが，かなり割の悪い賭けです．たしかにあの部分点は難しいですが，ギャンブルをするよりは遥かに確実だったでしょう．焦るとこんな大失策をするのです．
　実力が足りなかったということです．split もwalk も，実力が足りていれば片方は通せたかもしれず，次の1 年，もっと強くなりなさいと言われている，そんな気分です．
　感想文というよりも寧ろ自己分析に近い文章になりましたが，ここまで読んでくれた人はありがとうございます．来年は金メダルを取ります．

　今回のIOIは僕にとって2回目のIOIで，日本以外で初めて行うコンテストでした．私は25位というギリギリ金メダルに滑り込めた結果でした．しかし，私が実力を出し切れなかったことや心残りがたくさんあるので，これを含め感想文に記したいと思います．

　まずは，競技以外に関してです．私は10カ国以上の選手を含む多くの人と国際交流が出来たので良かったと思いました．中では外国のIOI代表選抜合宿（JOI春季トレーニング合宿に相当するもの）の難問を解いたり，解法を話し合ったりした時もありました．また日本選手は，今年は日本の土産として「ステープラー」を1人当たり60個程度貰いましたが，私は日本勢で唯一配り切ることが出来ました．しかし，私の英語力が外国人に比べて明らかに低かった影響で通じるのに少し時間がかかってしまったケースがいくつかあったので，大学に入るまでに英語を鍛える必要性を強く感じました．その点においては「国際交流の失敗」と言えます．よって，国際交流での自己評価は「85点」です．

　次に，競技1日目です．結果から書くと，72+100+40=212点，28-59位．私はCodeforcesでレーティング2700程度の実力がある事から考えると「大失敗」としか言えない結果です．その中でも，開始2時間時点でメダル圏外になったり，終了8分前時点で日本勢最下位だったりしました．何故そんな事になったのでしょう．

• 私は競技開始直後，1問目のrectに手を付けました．37点までは私にとって自明で，O(N⁴) の解法を実装しました．実装は開始18分時点で終わりました．しかしダウンロードしたサンプルケースと問題文の出力が合いません．自分のコードにバグがあるのではないかと考え，printデバッグ等をしましたがバグは全く見当たりませんでした．開始29分，ジャッジ側の問題を疑い，サンプルテストデータのミスを発見しました．入力の32個の整数のうち1つだけ値が間違っていたのです！これをclarに投げた後，提出した結果37点が得られました．
• 次に思いついたのは全ての値が0か1である特殊ケースの小課題6です．これをすぐに実装し提出を試みましたが，提出しようとした瞬間ジャッジにアクセスできなくなりました．僕は小課題6の解法を37点解法に上書きして書いたので，当時37点のコードを少し改善した小課題4の解法を思いついていたのですが，ファイルはサーバーにしかなく，サーバーが停止しているため結局ダウンロード出来ず10分間手止まりとなりました．
• 小課題4の解法，O(N³ log N) が定数倍で落ちた為，110分経過時点で簡単枠のshoesに移りましたが解くのに80分掛け，銅メダルやメダル無しの人より遅いタイムとなりました．splitの40点は簡単に取れたのですが，その時点で50+100+40=190点，しかし4時間以上が経過していました．rectが解けるかもしれないと思い小課題4の O(N³) 解法を詰めた結果，終了7分40秒前ギリギリに72点を取ることが出来ました．

　しかし，他の212点の日本選手（平木選手・行方選手）は開始4時間程経過した時点で212点を取っており，考察力の遅さが課題だと思いました．またジャッジがバグった時の立ち回りが非常に悪く，rectが手止まりである間に他の問題を読む等の対応が出来ませんでした．よって，競技1日目の自己評価は「45点」です．しかし一点問題があります．rectのテストケースが弱かったのです．誰とは言いませんが，この問題で72点を取った自分以外の人3人に確認したら全員最悪計算量 O(N⁴) の枝刈りで解いており，特殊なケースで落ちる解法だったのです．ですので，競技1日目は大失敗しましたが，競技終了後「自分は3人全員の解法を撃墜しかつ失敗原因の一部がジャッジ側の問題なので，厳しい位置からでも金メダル取れる」と自分を信じて競技2日目に臨むことが出来ました．

　そして，本質の競技2日目です．最初に言うべき事ですが，でも私は相当厳しい位置にいる事は知っていました．実際に212点獲得者の4分の1しか金メダルを取れていません．しかし皆さんの応援があったおかげで，「自分ならいける」と信じて競技に臨むことが出来ました．さて9時20分競技開始です．問題が見えました，が，なんと1問目に「output only task」というものが書かれていました．Output only というのは以下の形式の課題です．

• 最適化問題の一種であり，できるだけ最適な解を出せば高得点がもらえる
• 入力が予め与えられており，各入力に対して手元のパソコンで出力結果を提出する
• 実行が手元のパソコンであるため実行時間制限は無く，合計1時間かけてプログラムをぶん回した選手もいる．（この課題で最高点を取った人）

　1, 2問目が特殊な形式な問題で，私は3問目から手を付けました．最後の小課題が43点と配点が大きかった為，最後の小課題以外に挑戦し，序盤PCのバグに苦しめられながらも運よく爆速で通すことが出来ました．次に2問目の66点，私にとって自明な部分点を回収しました．私は1日目で厳しい位置にいたので，「最後output onlyはどうにでもなる．2問目で100点を取る事こそが勝敗の鍵だ」と思っていました．後になって分かったのですが，これは60%正解で，40%間違いでした．開始231分，ようやく100点を取る事が出来ました．僕は平木君のように天才ではないため，O(N) ステップの解法を思いつかず平方分割に走ってしまったのが実装長くなった原因です．しかしこんな事を考えている余裕はありません．なんと，残り時間は1時間22分12秒しかありません！私はここで初めてoutput only の問題を見ました．明らかに実装が重そうですが，既にこの課題で50点付近が明らかな金ボーダーになるだろうと踏んでいました．結局，バグらせながらも終了22分前に8点，21分前に28.05点を得ることができました．しかし私のプログラムには別のバグ – 最悪計算量が O(N² log N) である – がありました．直すのに結構時間がかかりそうだったので，先に特殊ケースのCase 7で満点を取ってその後デバッグを必死にしてました．その時点で10ケース中6ケースの提出が済んでおり41.04点，つまり僕の当時想定していたボーダーに9点程足りません．（実際このままコンテストが終わると1.42点足らずに銀．）無慈悲にもバグは直らず，何回提出しても点数が伸びませんでした．ですが最後まで諦めなかった結果終了110秒前（1分50秒前）に何とかバグは解決し，残りの「N が大きいケース」についてプログラムを回しました．その結果2ケースは提出できましたが，時間というものは厳しいものであり，残りの2ケースが提出できないまま無慈悲にコンテストが終わってしまいました．コンテスト終了直後，公式順位表を見る前は，この2ケースの提出遅れのせいで銀になった，残り10秒あれば金だったと思い，人生最大の絶望をしていました．
　緊張しながら公式順位表を見ると，，，なんと25位，ギリギリの勝利！全ての絶望が歓喜に変わり，今までの4500問を超える精進と三年半の努力が全て報われたという感覚がしました．後でわかったことですが，実はコンテスト時間が82秒短ければ僕は銀メダルだったようです．
　次に解析の時間．私は日本勢で唯一appeal（抗議票）を出しました．Appealというのは以下のようなものです．

• ジャッジやPCのバグ等によって自分の競技結果に不満がある場合，これを競技終了後に申し出ることができる．
• 出されたAppealの大半は通らないが，Appealが通った場合競技結果が変わる場合がある．それに伴ってメダルの色が変わる可能性がある．

　今回私は序盤PCの以下のようなバグに苦しみました．

• 開始1分程度で3問目のファイルをダウンロードしようとしたが，ダウンロードに何回も失敗した．開始6分で手を挙げ，修正してもらったのは開始12分47秒だった．
• 全員のPCが再起動された．2分30秒程度ロスした．

　結局コンテストは13分50秒延長されましたが，僕にとってはロスした時間が14分20秒程度でありコンテスト延長時間より長いのではないかということでappealを提出しました．もしappealが通れば，コンテスト終了8秒後に生成が完了したoutput only の1ケースが通って4.40点加算されます．が，以下の理由により落ちました．

• 競技1日目終了後に告知されていた特別時の新ルールを守らなかったこと（extra time requestをコンテスト中に投げなかった，終了後に席を立った，指定された場所にファイルを置かなかったなど）

　ではなぜそうなったのでしょうか．競技では問題文とともに「注意」という紙が配られます．ここには実装方法や制約などの，競技に参加する時に守るべき重要なことが書かれています．実は，競技 2 日目の「注意」には新ルールが全て書かれていたのですが，私は競技時間の 1 秒を重要とした結果読み飛ばしてしまいました．その結果，コンテスト終了まで気づきませんでした．これがappealの失敗の原因でした．総合的に見ると，競技2日目の自己評価は「70点」です．
　最後にまとめです．今回のIOIは金メダルとなったものの，心残りが多くあり，自己評価は85+45+70=200点にとどまりました．ですが，私から今後の選手にアドバイスできることを最後に書きたいと思います．

• 1つ目．基本的に毎年IOI日本代表選手用のslackが作られ，連絡は基本ここで行われます．ここではGA Meetingで決まった特別ルールなどに関する連絡も行われたりするので，選手は基本的に毎日確認するようにしましょう．もし競技前日や競技 1 日目に何か問題があった場合は，その翌日の競技の「注意」に追加の情報が書かれている可能性があります．コンテストの 1 秒も大切ですが，これを読んだ場合何か問題が起こった時にコンテストが延長される or アピールが通る場合があります．「注意」はしっかりと読みましょう．
• 2つ目．競技前日はしっかりと寝ましょう．僕は競技2日目の前日，他の日本選手が夜国際交流やエンターテイメントをしている中ただ一人早く寝ました．結果頭が働き日本勢最上位を取ることができました．
• 3つ目．IOIではよくサーバーのバグやミスが起こる傾向があるようです．そのため．より柔軟に対応することが重要です．今回僕はこれを柔軟に対応できなかったことによって1日目の最初の1時間を失いました．
• 4つ目．今回のギリギリの勝利で感じたことですが，競技時間5時間は，最初の1秒も，競技開始2時間17分経過後の1秒も，最後の1秒も価値は同じです．「一秒を無駄にするものは一色を落とす」ですので，途中たるまず，1秒たりとも無駄にしないことが大切です．
• 5つ目．これが最後として最大です．このIOIの競技時間は2日間合計で10時間13分50秒でした．しかし私はこの最後の1分22秒で金メダル圏内に上がり，最後の26秒で金メダルを確実にしました．最後の1分，最後の1秒，最後の0.1秒まで勝負は決まりません．「頭から終まで諦めず，自分が勝利すると信じ続ける事」 - これが選手を勝利へと導きます．

これで私の文章は以上です．4000文字の長文をお読みいただきありがとうございました．

　団長たちの最も大変な仕事は，コンテスト前日の課題文の翻訳です．夜のGA （各国の団長が集まる会議）では英語版の課題文が与えられ，各国の団長・副団長・随行員が翻訳にあたります．１度目の翻訳は午後11時頃には終わるのですが，翻訳をしている最中にも英語版が修正されることがあります．特に最初のコンテストの前日は英語版が確定したのが午前２時を過ぎており，翻訳を完成させてホスト国の印刷を待ち，選手に配る封筒に課題文が入っていることを確認したときには午前３時半頃になっていました．翌日の朝も質問に備えて待機する必要があり，９時にはGAの会場に戻るため大変でした．
　翻訳以外にもGAは行われ，コンテストの結果の確認やその他諸々の議題が話し合われます．GAやコンテスト以外の時間は団長たちも選手と同様に色々なところへ観光に連れて行ってもらいます．選手と一緒に観光するときには選手の写真を撮り，写真速報を更新するのも団長たちの大事な仕事の１つです．
　IOIに団長として参加するのは初めてでしたが，選手のときよりもIOIのことをよく知ることができたように思います．最終日に解散して帰国するときはいつもより寂しく感じました．

　副団長として5年ぶりにIOIに参加することになり，アゼルバイジャンに行って来ました．アゼルバイジャンは東北地方と同じくらいの緯度の国で，気候は東京よりもかなり涼しく，日差しが強いことを除けば快適に過ごすことができました．一番重要な仕事は競技前日に公開される問題文の翻訳作業なのですが，体力的にかなりしんどかったです．特に初日の競技の問題文は最終決定されるのが遅れ，業務が終わったのは午前3:30ごろでした．
　次に，今年の問題について書こうと思います．
　1日目はかなりオーソドックスな出題だったと思います．shoes は比較的典型な問題で，日本チーム全員を含む多くの選手たちが満点を獲得していました．split は40点までは容易ですが，その先は閃きが要求される難しい良問でした．(自分も翻訳しながら考察していたのですが，最後の1ステップが思いつかず悔しかったです(笑))rect はぱっと見た感じは典型な問題ですが，一捻り加えられていてこれもIOIらしい問題でした．
　一方，2日目は変則的な出題でした．line は2年ぶりに出題された出力のみの課題で，時間を消費しやすく，一般的な競技プログラミングのコンテストでは出題されない形式なので，ここで少しペースを乱された選手もいたかもしれません．vision も少し変わった形式 (与えられた操作の組み合わせで特定の値を計算する) で，閃かないと厳しかったと思います．walk は57点までは比較的容易に獲得できますが，そこからは高いアルゴリズム力や実装力が要求される難しい問題でした．
　総評としては，2日ともある程度の得点は取ることはできる (ので各メダルのボーダーは近年に比べ高かった) ものの，1日目で他の選手に差をつけるのは大変で，さらに2日目の癖の強さで圧倒されるという点で大変なセットだったと思います．
　競技や翻訳以外では，観光 (各コンテストの翌日)，閉会式などのイベントがありました．
　観光では，アゼルバイジャンの古都 (Icherisheher)や遺跡の散策や，horse showの鑑賞などがあり，独自の文化に触れる機会となりました．閉会式では，日本代表選手たちが壇上でメダルを授与されたり，国際交流 (一緒に写真を撮るなど) したりしていました．
　また，閉会式後には現地のガイドの皆様の厚意で，メトロやケーブルカーに乗って夜景が綺麗な場所を案内して頂きました．(その帰りに井上君と2時間くらい歩いてホテルに帰ったのはいい経験になりました．)
　まとめとして，期間中に選手が体調を崩してしまうこともありましたが，全員がメダルを獲得したことは非常に良かったと思います．また，他国の選手との交流にも積極的で頼もしかったです．日本代表選手の皆様，お疲れ様でした．そして，情報オリンピックの運営に携わる全ての皆様，ありがとうございました．

　今回のIOIの開催国であるアゼルバイジャンは，日本選手団の全員にとって全くの未踏の地であり，現地での生活面に関しては，去年の経験もあり，はじめはあまり多くを期待してはいなかったのですが，この先入観は大会初日で大きく覆ることとなりました．
　まず印象的だったのは宿泊施設です．選手たちの寝室は大変に広かったらしく，去年のこぢんまりとした寮の一室とは遥かに違うようでした．また1階には卓球やビリヤード台などが用意されており，娯楽面での充実も伺えます．我々随行員の宿泊施設は，選手村からは離れた位置にありましたが，こちらも小綺麗な高級めのホテルという印象で，自由に利用できるジムとプールがあったことが個人的には特に嬉しかったです．食事が口に合うかは個人差があったとは思いますが，デザートの完成度は高く，それなりの値段のしそうなケーキが無限に提供される点がとりわけ魅力的でした．
　チームガイドを含む大会運営スタッフの方々の応対も非常に丁寧で，大会期間全体を通して何をするにも至れり尽くせりの環境でした．エクスカージョンでの観光や，開会式での伝統的な音楽の演奏など，アゼルバイジャンの歴史・文化に触れられるプログラムも充実しており，選手たちにとっても我々引率者にとっても共に快適かつ有意義な滞在でした．