IOIへの参加は去年に引き続き二回目です。去年はオンライン開催になってしまったので、実際に開催国へ行くことができたのは今年が初めてです。まずは、現地開催を実現してくださった関係者の皆様へ感謝を伝えたいです。ありがとうございます。 競技の結果は、日本選手が全員金メダルという素晴らしいものでした。また、個人的にも、去年より安定したパフォーマンスを出し、高い順位を取ることができたので、非常に満足しています。
　この参加記では、IOIへ向けてあるいはIOIにおいて何をしてきたかを覚えている限り記そうと思います。

・出発前（7/20〜8/5）
　絶対にコロナに罹ってはいけないということで、家族とは部屋を分けて生活していました。まだ解けていないIOIの過去問に取り組んだり、以前に解いた問題の復習をしたりして過ごしました。
出発数日前、寝ていたら簡易型の加湿器が落ちてきて顔面から流血という、なかなかコミカルな怪我をしました。

・出発（8/5）
　壮行会などは8/6だったのですが、その日は集合時間が早かったので、前日に出発して成田空港のホテルに宿泊しました。

・壮行会、直前研修、出国（8/6）
　選手団が揃い、壮行会を終えると、ついに出発するのかという感動と期待を覚えました。また、この日まで体調を崩さずにやってこられたことにひとまず安心しました。
空港では、なんと米田優峻さん・寛峻さんを見かけたので、この人たちの問題が出るのではないかと選手の皆さんと話していました。
　八時間という長いフライトの後、ジャカルタに到着しました。入国手続きなどに時間がかかり、ホテルの部屋に着いたのは日本時間で深夜3時ごろでした。

・会場へ移動（8/7）
　飛行機でジョグジャカルタへ移動し、その後バスで会場のホテルまで移動しました。ホテルでいきなり抗原検査を受けさせられると言われ、完全に油断していたのでいきなり不安になりました。結果は全員陰性だったので良かったのですが、かなり心臓に悪かったです。昼ご飯を食べていなかったのでお腹が空いていたのですが、残念ながらホテルの食事はあまり口に合いませんでした。部屋は広く、ベッドも柔らかかったので、快眠することができました。

・プラクティス（8/8）
　プラクティスでは、コンテスト開始直後のルーティーンを確認しました。トイレに行きたい、考察用紙が追加で欲しいなどを伝えるカードの中に、バナナが欲しいという内容のものがあったのが面白かったです。会場を見渡すと髪も顔も体型も服も全く異なる選手たちが目に入り、こんな選手たちが、みんな自分と同じように競技プログラミングに取り組んでいるのだなと感動しました。この中で自分は絶対に上位1/12以内だと言い聞かせてプラクティスを終えました。今後JOI春合宿やIOIなどに参加する選手の皆さんは、まず会場を見渡すようにすると、普段と異なる場所で戦う心の準備ができると思います。
　夕食後はgame roomという卓球台やボードゲームが置かれた部屋に遊びに行きました。日本選手で2vs2に分かれてチェスをしたら、たった一戦で90分くらい使いました（負けました）。また、Codeforces などで広く名の知られた選手たちが同じ部屋にいるのを見て、驚くとともに自分が同じ場所にいられることを嬉しく思いました。やろうと思っていた過去問の復習は全くできませんでしたが、これはこれで満足でした。
　ホテルの部屋では、洗面所のドアの鍵が勝手に閉まったり、バスタオルが交換されていなかったりと、外国ならではの経験をしました。
　この日の時点で日本食が恋しかったです。

・開会式（8/9）
　開会式の演出は全て素晴らしいものでした。楽団の演奏を聴いたり、伝統舞踊を見たりしました。参加国の紹介でJapanが呼ばれたときはとても気持ちが昂りました。この他にもIOI 2022テーマソングと題された曲の披露があったのですが、歌のうまさと歌詞の競技プログラミング要素のミスマッチが面白かったです。
　ホテルに帰ると再び抗原検査を受けさせられました。油断しているところを突かれるのはこれで二度目でしたが、全員陰性で切り抜けました。
　夜は過去問の復習をして過ごしました。

・競技一日目（8/10）
　質の良い睡眠の後、午前中はコンテスト中の立ち回りや、自分でまとめた過去問の要点集などを確認して過ごしました。いつものように缶コーヒーを飲んで会場に向かいました。緊張よりも期待感の方が大きかったと思います。
　コンテストが始まると、いつも通り全問に目を通し、なんとなく解けそうな見た目をしているcatfishから考えました。小課題の誘導に乗って順番に点数を伸ばしていき、開始95分で満点を獲得しました。自分は、早い段階で一問解けたコンテストではかなり成績が良い傾向にあるので、まず100点を獲得したのは大きな自信に繋がりました。
　続いてprisonとtowersを考えます。towersの考察が全く進まないので、prisonに集中することにし、ひとまず典型の考え方で48.5点を取りました。その後しばらくすると、65点の解法が天から降ってきました。この日の勝敗を分けたのはこのタイミングだったと思います。その後、小手先の改善で80点まで取れると分かり、開始200分で80点を獲得しました。
　towersはかなり難しい部類の問題だという直感が働いたので、部分点の回収に回ることにしました。40分かけて41点を取り、その後はprisonの追加点と並行して考えました。すると残り30分の時点でprisonの90点を思いついたので、残り15分時点で獲得し、コンテストが終了しました。towers の部分点を取る過程でコードがバグってしまったとき、焦らず5分程度でストレステストを書くことができたのはファインプレーだったと思います。
　結果は15位という好調なものでした。日本選手全員が金メダルに十分手が届く範囲だったのも嬉しかったです。去年のIOIは一日目終了時点で銀メダルにすら届いておらず、また自分はJOI春合宿などにおいてもスロースターターである傾向があったので、一日目を良い成績で終えられたのは大きな収穫でした。
　しかし、この日からお腹を壊してしまい、以降数日間腹痛が続きました。

・エクスカーション1（8/11）
　伝統舞踊の体験をしに行きました。運動神経には自信がなかったのですが、IOIの選手はもれなく自分と同じでダンスが下手だったので親近感が湧きました。
　夕食にガイドさんが吉野家の牛丼を買ってきてくれました。今回の旅の中で一番美味しかったと思います。
　この日の午後の検査で日本選手の中に陽性者が出てしまい、競技には出られるとのことでしたが、それでもとても心配でした。後から聞いた話によると、この日の検査で（全参加国合わせて）10人以上の陽性者が出たそうです。

・競技二日目（8/12）
　腹痛に加えて喉の痛みにも襲われ、かなり不安な気持ちでしたが、とりあえず体調のことは後にしよう、今日は競技に集中するべきだと言い聞かせて会場に向かいました。
　全問に目を通して、木+数え上げという得意分野のcircuitを考えますが、うまく問題の本質が掴めず、一向に解法が浮かびません。開始60分で18点だけ取って別の問題に移りました。insectsは37.5点がすぐに分かったので取りましたが、それ以降は小手先の改善以外何も思いつきません。islandsは難問の見た目をしているので、とりあえず30分程度で部分点を全て回収しようとしますが、何度もバグらせてしまい、一時間かけて27.75点しか取れませんでした。序盤でうまく点が取れない、という自分の典型的な失敗パターンをなぞっており、非常に焦りました。
　一旦insectsに戻り、頭に浮かんでいた改善をとりあえず実装して提出してみると、なんと93.68点が返ってきます。これが今大会で最も運の良かった部分だと思います。今後大会に参加する選手の皆さんは、特にCommunication型の問題の場合、どれくらい点が伸びるかわからない改善であっても、とにかく提出してみるようにするのがよいです。
　点数が伸びたことで心に少し余裕ができ、落ち着いてcircuitを考えることにします。問題を大雑把に眺めてみると、クエリ毎に木の形状を参照していては解けるはずがないだろうと気づきました。つまり、前計算で木の形から係数の列を求め、木ではなく数列の区間に対するクエリだとみなして解く以外に自分の知っている方法は通用しないだろうと思ったのです。するとスラスラと解けてしまいました。開始240分で100点を取り、ようやく一日目と同じ冷静さを取り戻しました。考察が行き詰まったり、どんどん変な方向に進んでいったりしたときは、問題をメタ的に捉えてみると方向性を正すことができます。
　残りは、先ほど取りこぼしたislandsの部分点に時間を割きました。とりあえず31点に伸ばし、55点の獲得を狙います。しかし正しいと確信している解法で一向に点が取れないので、一日目を思い出し、残り30分という短い時間でストレステストを書く決断をします。すると落ちるケースが見つかったので直して判定問題パートを合わせ、39.4点に伸ばしました。この時点で残り時間は15分で、残り2分の時点でなんとか55点を取ることができました。
　結果、日本選手は全員が金メダルでした。自分だけでなくチームとして良い成績が残せたことがとても嬉しかったです。特に、コロナに罹っている中頑張った選手は本当にすごいと思います。
　しかし、この日の競技で自分の未熟さを実感しました。総合16位という結果だけ見れば良いものですが、序盤でうまくいかず焦ったり、普段よりバグが多かったり、終了2分前にギリギリ滑り込んだりと危なっかしい日でした。序盤で躓いたパターンで成功したのは今回が初めてなので、良かった点、悪かった点を踏まえて今後の成長に活かしたいと思います。

・エクスカーション2（8/13）
　ボロブドゥール遺跡へ行きました。途中で大雨に降られて膝から下がずぶ濡れになりました。夜は夕食会場でライブパーティーのようなことをやっていて、競技プログラマとは思えないテンションの高さに驚きました。

・閉会式（8/14）
　閉会式の演出にも心から感動しました。金メダリストの表彰で自分の名前が呼ばれ、メダルをかけてもらったときはこれ以上ないほど嬉しかったです。
　個人的には、来年のIOIハンガリー大会の予告映像が一番素敵だと思いました。幸い自分にはあと一回チャンスがあるので、来年も絶対にIOIに参加するぞと意気込みました。
　帰国のために必要なPCR検査の結果が唯一心配でしたが、陰性だったので安心しました。

・帰国（8/15, 8/16）
　成田空港行きの飛行機が早朝だったので、8/16は朝3:30に起きました。空港で食べたご飯やJALの機内食が美味しかったです。帰国して最初に食べたのがデリバリーのお寿司で、日本食の素晴らしさに感動しました。ホテルの水道水の透明具合がインドネシアと全く異なり、水が飲めることの安心感を実感しました。外国へ行くことで色々なことを知れたような気がします。

・表敬訪問、帰宅（8/17）
　文部科学副大臣への表敬訪問を行った後、帰宅しました。

　今年のIOIで得られたものは、約二週間という期間に見合わないほど大きなものであり、自分の今後の人生を形作っていくものだと思います。家族、選手の皆さん、選手団役員の方々、事務局の方々、IOIの運営の方々、現地のガイドさん、…など、挙げるとキリがないですが、周りの人がいなければ成り立たなかったことです。心から感謝しています。

　まず、IOIへの現地参加というとても貴重な体験ができたことについて、本当に幸運だと思っています。コロナ禍という厳しい状況下で現地開催のために尽力してくださった、大会関係者やJCIOIの方々を始めとする全ての方々にこの場を借りて感謝を申し上げたいです。現地開催だからこその気づき、学び、交流が大いにありました。次に、現地で私たち選手を色々な面でサポートしてくださった、団長団の方々にも感謝を申し上げたいです。ご迷惑をおかけした部分もあったかと思いますが、団長団のサポートのおかげでIOIを最大限満喫することができました。そしてこれまで僕を応援してくれた家族や友達にもとても感謝しています。彼らの応援がなければ、僕は決してこの場所にたどり着くことはできませんでした。僕はこれまで何度も挫けそうになったことがありましたが、友達からの言葉に勇気づけられたことが多々ありました。本当にありがとうございました。
　今回のIOIで金メダルという栄誉ある賞をいただけたことを嬉しく思います。更に日本代表全員が金メダルを受賞するのは初めてということで、とても光栄です。競技では思うように点数が伸びず悔しかった部分もありましたが、今僕の中にあるのは金メダルを受賞できたことへの安堵と達成感のみです。また、これからは多方面の分野に手を伸ばしていきたいと考えています。情報オリンピックへの参加は僕にとって、科学に興味を持つ大きなきっかけとなりました。
　最後に、IOI参加を目指す後輩たちへ伝えたいことがあります。世界中の選手300名以上が集まる会場で、普段通りのパフォーマンスを発揮することは簡単なことではありません。実際に僕も会場の雰囲気に飲み込まれそうになりました。ですが、競技に取り組む上で最も重要なことは、全力で楽しむことと自分に自信を持つことです。このアドバイスが少しでも役に立てば幸いです。

　以下は大会期間中の日記です。

Day -1
　明日から待ちに待ったIOIが始まると思うと、緊張してなかなか寝付けません。。。

Day 0
　成田国際空港に到着、選手や随行員が集まってきて、いよいよIOIが始まるんだなあという気持ちになってきました。チームTシャツをもらい激励を受け、ついにインドネシアに向けて出発です！

Day 1
　ジョグジャカルタ空港に到着すると選手がたくさん集まっていて、記念写真を撮ってから、チームガイドと一緒にホテルへ向かいました。移動中は IOI の過去問や問題傾向について話し合いました。日本のチームガイドは galang さんと denzel さんです。
　ホテルに着くとトラブル発生、シャワーのお湯が冷たい！僕は全てを諦め、インドネシア人の気分で冷水シャワーを浴びました。

Day 2
　プラクティスの日。競技環境に慣れるため、予め配布されていた問題を本番と同じ環境で解きます。持ち込んだキーボードがつながるかなど色々心配していましたが、特に問題もなく競技に取り組めました。会場にはマスコットを持ち込むことが許可されており、海外の人は日本のアニメ好きな人が多いというのを聞いていたので、進撃の巨人と黒子のバスケのフィギュアを持ち込んだところ、海外の選手やスタッフが “It’s so cute!!!” って言ってくれました。黒子のバスケを知っている人も多く驚きました。近くの席に rainboy がいたので話しかけました。会話の中で僕ABCの作問してますって言ったら “Are you blackyuki?” って言われました。わー！
（補足）競技プログラマーはハンドルネームで呼び合うことが多いです。
　夕食が終わってから日本選手4人で Game room へ行き、僕は果敢にもイタリア選手に対戦を申し込みましたが一瞬で負け、悟ります。教訓1：イタリア人はチェスが強い。
　その後エジプト選手に「おすすめのアニメ教えて！」と聞かれたのですがあいにく日本選手は有名なアニメしか知らず、”Attack on Titan?” “Of course I have watched it!” “Haikyuu?” “Of course I have watched it! Anything else??” “...…” みたいなやり取りをしてました。せっかくなので僕の部屋まで来てもらって、お土産にと持ってきた進撃の巨人のファイルを一つ渡すととても喜んでくれて、僕もエジプト土産をもらいました。教訓2：IOIに参加する人はアニメに詳しくなっておいた方が海外選手との話題が増えて楽しいです。

Day 3
　開会式の日です。会場に到着すると、入口付近で民族衣装を着た人が踊ったり楽器演奏などのパフォーマンスをしていました。開会式が始まるとオーケストラ演奏、国歌斉唱、スピーチと続き、だんだん英語の字幕を追うのも疲れてきて聞き流していました。
　夕食はアメリカ選手たちと同じテーブルで食べて、JOI 春合宿の問題が難しすぎる話をしたり、解いたUSACOの良問の話をしたりしました。
（補足）各国の代表選考合宿に出題される問題は公開されているものが多く、競技者はIOI対策として他国の代表選考合宿の問題を解いています。USACOはアメリカのIOI代表選考のことです。

Day 4
　いよいよ Contest Day 1 です！
　競技は18時に終わり、疲れきった僕はその後の夕食でスープを入れるつもりが自分の手にぶっかけてしまいます。とても熱かったです。意気消沈している僕に団長が順位表を見せてくれました。どうやら僕は28位だそうです。
　正直今まで過去問を解いてきてこのような順位はとったことが無かったですが、落ち込んでも仕方ないので、気持ちを切り替えることにしました。気晴らしにJPN2と game room に行くと、ガイドdenzel さんが一緒にモールにいかないかと誘ってくれました。フィリピン選手4人とも合流し、かれこれ1時間ぐらい話していましたが、店の閉店時間になって追い出されてしまいました。フリクションペン（海外では珍しいらしい？）を一人ずつ渡したところ、とても喜んでくれました。

Day 5
　待ちに待ったエクスカーションの日です。国立芸術大学に行く予定ですが、ここでもトラブルが発生します。僕は昨日の競技の疲れからか寝坊してしまったのです！朝目覚めると9時20分で既に出発した後でした。...というわけで朝食をとれないこととエクスカーションに行けないことが確定してしまったように思われたのですが、なんとガイドdenzel さんがタクシーを手配してくれた上に朝食も用意してくれました。本当に感謝しかありません。
　遅れて到着すると、どうやら現地のプロの人に民族舞踊を教わっているようです。JPN1とJPN2を見つけて合流し一緒に踊りました。楽しかった！昼食を食べていると、隣のテーブルにカナダチームが座っていたので、duality に握手をしてもらい、世間話をしました。
　ホテルに戻ると僕は部屋移動をすることになりロビーで待機。するとunravelのピアノ曲が聞こえてきました。近くに行ってみるとオーストリア選手が弾いています。東京喰種を知っているのと聞くと、”アニメは見ないけど曲は知ってる、とてもいい曲だね”
　なかなか移動先の部屋の準備が終わらずひたすら待っていると、昨日一緒にドーナツを食べたフィリピン選手がやってきて、昨日くれたお土産のお返しにとフィリピン硬貨をくれました。そしてガイドgalang さんが”We’ll give you a real gold medal tomorrow” と言って、パッケージに Gold と書いてあるKitKat をくれました。

Day 6
　いよいよ Contest Day2 です！今日の結果でメダルの色が決まります。この日も特に不備なく競技が終了し、団長団と合流して順位表を確認すると、なんと日本選手全員が金メダル圏内でした。全員が金メダルを受賞することは日本初とのこと。歴史的快挙です！
　夕食はモール内の丸亀製麺へ。この日はすべてのストレスと緊張からようやく解放されてよく眠れました。

Day 7
　エクスカーションの日です。競技前に体調を崩しては大変だと思い昨日まで食事の量を控えめにしていたのですが、今日の朝食は思う存分食べました。そして見事にお腹を壊しました。午後から世界遺産ボロブドゥールへ。遺跡観光の後、夕食会場に向かいました。会場からはライトアップされたボロブドゥール遺跡が見渡せて素晴らしい光景です。終盤いつの間にか夕食会場はライブコンサートに変わっていて、海外の選手たちはみんな曲に合わせて踊っていました。最終的になぜか僕とJPN2も壇上で踊っていました。明日でIOIも終わってしまうのか...楽しければ楽しいほど悲しい気持ちに。
　ホテルに着いてから Timothy Feng に会ったので、Day2満点おめでとう！と言うと、”Congrats to Japan for getting 4 golds‼” と祝ってくれました。

Day 8
　閉会式の日です。会場Prambanan Temple に到着すると、いろんな人が “Congratulations Japan!” と声をかけてもらえて嬉しかったです！閉会式が始まると、ダンスパフォーマンス、祝辞が続き、いよいよメダリストの発表です。
　ステージでメダルの授与が行われます。銅メダリストから順に名前が呼ばれ、銀メダリスト、そして金メダリストの番になりました。これまでにないほどの拍手喝采が起き、自分の名前が呼ばれると急に色々な感情がこみ上げてきて、今までの努力が報われて良かったという安堵と、IOIで金メダルを獲るという目標を成し遂げたことの達成感、そしてここまで諦めずに挑戦してきた自分を褒めたいという気持ちなどが同時に起こり、もう泣きそうです。メダル授与式が終わると、最後に盛大に花火が打ち上げられ、ついに閉会式が幕を閉じました。
　寝る前にソニーのワイヤレスイヤホンで好きな曲を大音量で聞き、達成感に包まれとても幸せな気持ちになりました。

Day9
　お別れにガイドdenzel さんがインドネシアのお土産をたくさんくれました。思い出が詰まったインドネシアともお別れです。

（注）競技の内容については、僕は日本勢最下位なので、他の方々の感想文を参考にしていただきたいです。軽く各問題の感想を述べておきます。
　1-A　最初に問題を見たときは難しそうだと思いましたが、着実に考察を重ねていくと解けるようになっています。正直Day1の敗因は簡単枠であるこの問題に時間をかけすぎたことだと思います。
　1-B　特殊な形式の問題です。少し考えると50点の解法が思いついたのですが、そこからがどうも上手くいかず、1-C の方が僕が得意そうな見た目をしていたため、30分ぐらい考えて諦めてしまいました。これはDay1の敗因2です。実際他の日本代表は全員この問題で80点以上をとっていました。
　1-C　この問題はかなり難しいのですが、着実に考察していくと少しずつより簡単な問題に帰着されていって、最終的には木の問題への言い換えができました。僕は木の問題が得意なのでうれしい気持ちになったのですが、クエリでの数え上げのパートでHLD+セグ木＋二分探索でlogが3つついてしまい、重実装なうえTLに間に合わないので想定解ではないだろうと思いながらもとても惜しいところまでは行ってる気がしたので、悔しい気持ちになりました。仕方なく部分点の77点を回収することになったのですが、なぜか最後の19点が通らず、58点となってしまいました。自分が生成したランダムケースでは落ちるケースがなかったので、もしかするとテストケースがおかしいのではないかと思い解析の時間に頑張りましたが、テストケースは正しかったです。もっと悔しかったのは、Day2の競技開始前にこの問題の満点解法を思いついてしまったことです。
　2-A　この問題は処理が複雑でよく分からなかったので一旦飛ばしたのですが、改めて戻ってきて考えるといかにもギャグっぽい見た目なのでその方向で考えると本当にギャグだったので笑ってしまいました。
　2-B　インタラクティブ形式の問題です。解法は今年のJOI春合宿の問題に似ていたので、すぐに思いつきました。適当に書いて提出してみると50点が返ってきて、パラメータを調整したり枝刈りをしたりするとどんどん点数が上がって91.4点になったので面白かったです。
　2-C　この問題は本当に難しいです。今でも解法がわかっていません。暇な時があれば落ち着いて考えてみたいです。

　最後まで読んでいただきありがとうございました！

　競技プログラミングの大会が現地集合で行われることが激減した中で、 JOI の合宿を除けば新型コロナ流行前以来の出張でした。長時間の飛行機での移動は体力に響くのが明らかなので嫌いましたが、今回ばかりはと思って耐えられました。途中で感染症にかかったことも含めて海外旅行はとても難しかったですが、同伴の方々とガイドの方々と仲間に大変お世話になって、上手くいきました。特に、英語での会話が想像以上に難しかったのが印象的でした。それに対して、競技は普段の競技プログラミングと同じ感覚で臨むことができました。実は大会前の自信は銀メダルくらいでしたが、金メダルを獲得できたのでただ嬉しいです。しかし、試合前や試合中の段階では何も思わなくても、蓋を開ければ全員が金メダルを獲得する快挙だったので、もしも僕が一人だけ銀メダルだったら後悔してしまったかもしれないと思っています。とはいえ今重要なのは、競技のときに不要な緊張を持ち込まなかったのが良かったということです。

　今回のIOIで、見知らぬ地で初めて会う人々と共に過ごした９日間は、非常に新鮮で、忘れられない思い出として心に深く残りました。思い返すと、空港についた時から既に歓迎ムードがあって、ワクワクしたのを覚えています。開会式などを経て迎えた競技では、あまり緊張することなく自分の実力を出し切れた上に、面白い問題も多く終始楽しむことができました。特に prison や insects といったインタラクティブ的な問題が個人的には好みでした。2日間の競技が終わった後は、全ての緊張から解放されてエクスカーションなどを楽しみました。特に閉会式の演出は凝っており印象的で、ステージでメダルをかけてもらった時や、最後に花火が上がった時は感動しました。海外の選手たちとの交流も、思い通りとはいかないにせよ、頑張って色々な国の人と話せたのは良い経験でした。
　思えば、私が初めて競技プログラミングと出会った日からはや３年が経とうとしています。JOI を知った日、夏期セミナーに参加して刺激を受けた日々、春合宿で初めて対面のイベントに参加した日々、振り返ると懐かしい思い出が次々と蘇ります。私の高校生活は常に情報オリンピックと共にあり、オンライン開催に悔しさを滲ませたことも数多くありました。そんな中、集大成である今回の IOI が３年ぶりに現地開催され、代表選手全員金メダルという史上初の快挙を成し遂げられたことは、今までの悔しさを全て打ち消しても有り余る嬉しさであり、この大会や私自身を支えてくれた人々には感謝の気持ちでいっぱいです。

　今年の IOI は、COVID-19 の影響下での初めてのオンサイト開催であった。コンテストをハイブリッド形式で行う、現地の参加者に対して定期的に抗原検査を行う、など例年よりも負担が大きかったと思うが、両日とも問題なくコンテストが行われ、素晴らしい運営がなされていたと思う。大会日程については、開会式とプラクティスが別日に行われたため、例年よりも 1 日長かった。コンテストの日の午前中も休憩であったので、全体を通して時間に余裕があった。
　競技会場は選手のホテル内にあったので、移動の負担もなく、選手には快適であったと思う。また、選手のホテルはショッピングモールと繋がっており、ガイドさんと一緒であれば好きなときに立ち寄ることができた。日本選手団はホテルの食事の気分転換に、ショッピングモールのお店で食事をすることもあった。団長団のホテルのまわりには特に見に行くような場所はなかったが、ホテルの中にはプールやゴルフコースなどがあり、ホテルから出なくとも十分に余暇を満喫できた。
　観光ではインドネシアの史跡を訪れた。しかし天候に恵まれず、ボロブドゥール遺跡を訪れた際には強い雨に見舞われ、十分に遺跡を巡ることができなかった。閉会式の際も、会場が屋外だったのだが、雨に降られてしまった。しかし最後には雨も止み、盛大な花火を以て閉会式が締めくくられた。久々の花火は強く印象に残った。

　今年のIOIは堅実に取り組めば高得点が取れる良問が揃っていました。
　競技1日目の「ナマズ釣り場」や競技2日目の「電子回路」のような比較的易しい問題も出題されており、上位を狙うにはこれらの問題できちんと得点することが重要でした。一方で、 競技1日目の「囚人たちの挑戦」のような一見してとっかかりが見つからない問題や、競技2日目の「セリブ諸島」のように部分点と満点の間に大きな壁があって細部を詰めることが難しい問題も出題されました。競技2日目の「最も珍しい昆虫」は、一見してとっかかりが見つからない問題でしたが、単純な問題設定の中にも独特の癖があって、それをどう処理するかで悩む面白い問題だったと思います。
　深い考察が必要な問題が多く出題されていました。これらの難問に立ち向かい、金メダル4個というすばらしい成績をおさめた日本代表選手の健闘を讃えたいと思います。

　IOI 2022 インドネシア大会は無事閉幕しました。
　今回の大会は、3年ぶりに現地で開催することができました。会場の広いホールで外国選手を隣にして臨む競技では、わくわくや緊張も違うものだったと思います。
　1日目5時間の競技が終わった後、選手は各問題について各々の解法を話し合っていました。
　2日ある競技日の間の日には選手は遺跡や王宮へ行ったり、伝統の踊りを体験したりしていました。外国からの選手や現地の人との会話は英語ですが、フレンドリーな人が多いので話しやすいです。
　選手は競技後会場から出てきた初めて自分の(暫定の)順位を知ります。体調不良で別室で競技に参加していた田村選手にも結果が伝えられました。そして金メダルの順位だということを知ってガッツポーズをする選手もいました。
　新鮮なインドネシア生活ですが、やはり日本に帰ってくると安心している人が多かったように思います。
　以上、団長団からみた選手の様子でした。

　一般社団法人情報オリンピック日本委員会専務理事として、第34回国際情報オリンピック (IOI 2022) インドネシア大会日本選手団に帯同しました。この大会は、3 年ぶりに対面（オンサイト）での開催となりました。しかし、完全なオンサイト開催ではなく一部の国・地域の参加者はオンラインでの参加というハイブリッド方式となりました。主催国はインドネシア共和国で、オンサイト参加の会場は古都ジョグジャカルタです。オンサイトとオンラインの両方の参加方法の選手がいる国もありました（ハイブリッド参加）。8月5日のデータでは、オンサイトのみの参加、ハイブリッド参加、オンラインのみの参加の国・地域の数は、それぞれ、62、8、18 でした。残念ながら諸事情でオンライン参加となった選手もいましたが、主催国インドネシアからの特別参加選手も含めると約 270 名の選手がジョグジャカルタの地に集まりました。対面での IOI が再開したと言えるでしょう。
　オンサイト参加者が多いとはいえ、ハイブリッド開催です。その運営は、一昨年・昨年のオンライン開催やそれ以前のオンサイト開催以上の苦労があったと思われます。しかし、主催国インドネシアの運営チームは、しっかりと準備を行いとてもうまく大会を運営しました。オンライン参加の国・地域があるため、選手が関わる競技や役員が関わる GA meeting ・翻訳作業の実施方法も、オンライン開催の昨年の方式が踏襲された部分が多くあります。例えば、オンサイト開催だった 2019 年までの Grading system では、選手が提出した課題を評価実行は、選手が競技で使用している PC と同じ機種上で行われていましたが、2020 年からはクラウドサービスのインスタンスを利用しています。対面開催となってもこの流れは変わらないのではと推察します（そもそも、現在の新型コロナウイルス禍が収まっても、何らかの事情で対面参加できない国・地域や選手のためにハイブリッド形式が続くかもしれません）。GA meeting や翻訳作業では、Matrix プロトコルに基づきセキュアなコミュニケーションが行える Element というサービスを昨年に続いて今年も使用しました。このように、2 年間のオンライン開催の経験を活かして、IOI 開催方法も進化しています。
　このようなすばらしい運営のおかげや、日本選手団役員のサポートもあり、日本選手は実力を発揮でき全員金メダルを獲得することができました。大会運営に携わった皆さまや、情報オリンピック日本委員会の活動をご支援いただいている皆さまに、感謝申し上げます。
　IOI 2022 の競技や大会の様子は、選手や役員の皆さんの報告におまかせして、開催地に関連する話題に少し触れたいと思います。ジョグジャカルタは、インドネシアの首都ジャカルタと同じ南半球のジャワ島にあります。役員側のエクスカーションでは、クラトンと呼ばれる王宮を訪れました。18 世紀後半に建てられ、それ以降この地域のスルタン家の王宮とのことです。今でも、スルタンが住まわれているとのことで、後から知ったのですが、ジョグジャカルタ特別州ではさまざまな経緯で現時点ではスルタンが知事を兼務しているそうです。GA meeting では、主催国組織委員会が推薦した方が議長を努めます。IOI 2018 日本大会（つくば市）では、筧理事長に議長をお願いしました。GA meeting の冒頭、議長の Gusti Kanjeng Ratu Hayu 氏が ”Princess” と紹介されました。そのときはよく分からなかったのですが、閉会式の挨拶で現スルタンの子であるとお話をされ、まさしく “Princess" だったのだとようやく繋がりました。インドネシアはイスラム教徒が人口の 85 ％以上を占めていますが、イスラム教を国教としてわけではなく、他の宗教も尊重しているそうです。王宮には、ヒンドゥー教・仏教・イスラム教と 3 つの様式を 1 本に取り入れた柱がありました。ボロブドゥールは仏教寺院ですし、プランバナンはヒンドゥー教寺院ですね。Wikipedia の情報によると Princess Hayu は、ヒンドゥー教に改宗されたそうです。こうして IOI 2022 のことを思い返してみると、少しジャワの文化の多様性と歴史の流れを垣間見れた気がします。